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NO,011 |
■ まげねっちゃ
10月
編者:まげねっちゃプロジェクト
出版:株式会社 青志社
つなみの被災地 宮城県女川町の子どもたちが見つめたふるさとの1年の記録である。
女川に暮らす多くの中学生や教員が、地震のその時、その後、を書いた作文と手記と俳句
(五七五)や詩、そして在りし日の女川の町の様子を写した写真、津波その時、そしてその
後の町の様子を写した写真、未来の女川の絵からなる本である。
悲惨な体験した人でしか書けないような、淡々とした語り口に中に凄まじい景色が、ありの
ままに書かれている。これが、かえって恐ろしさと重みと言葉に出来ないこみ上げるような
想いを読む人が感じてしまうような迫力を持っている。
ありのままに、その時、何をしたか、客観的に記録されている教員方の手記を読んでいると、
映画のようにその場の映像が浮かび上がってくる。より正確に、より細かく描写する事で、
後世に伝えたいという思いがあるのだろう。また、これを書く事で自分
の中での震災に対して、まず一区切り着けたいという思いでもあるのであろう。そのひとつ
ひとつの言葉は、大変重い。
ところで、多くの子供たちの書いた作文の中で共通しているのが、避難生活で困っている時
に助けてくれた日本国中、さらには、世界中からの人たちによる支援に心から感謝している
事である。電気やガスや水道といった当たり前のものが全て無くなり、原始の世界に紛れ込
んだ時、人と人との繋がり、優しさ、温かさを本当に心の底からしみじみと感じている事で
ある。
震災で、多くの大切な物、事、人を失ったけれど、人と人との絆や有難味をもらった思いが
綴られている。
最後に本のタイトルでもある「まげねっちゃ」は宮城県の方言で、「負けない」という意味
だが、東北人がこの言葉を使う時は、「泣きたい時もあるけどへいちゃらだぁ〜」という
明るい表情で喋る事が多い。明日の未来を夢見る次の若い世代が楽しみである。
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