NO,013

■ 奇跡のリンゴ

  12月

著者:石川 拓治
出版:株式会社 幻冬舎

ご存じベストセラーの本である。
青森で、評判のとても美味しい「奇跡のリンゴ」を育てる木村秋則氏の現在に至るまでの
過程を取材した本である。

若い頃、自然農法の本に出会い、林檎でそれを出来ないかと試行錯誤を繰り返す事数十年、
林檎の木は枯れ始め、林檎の収穫による収入がまったく無い年が、何年も何年も続く。
周りは心配して反対するが、それも聞かずにそのうち相手にされなくなる。それでも自然
農法でやるんだという最初の想いは揺らがない。

そんな出口の無い年月を過ごし、借金まみれになりとうとう山で首を吊って死のうとする。
そこで、目の前にあった一本の木が彼の人生を変える。
人の手が何も加わっていない自然の中で、すくすくと何故木は育つのだろうと、山の土と
林檎畑の土の違いに気が付く。ここから彼の人生は大きく変わっていく。

信念を貫いたその果てに新しい世界が拡がっていく。
映画「フィールドオブドーリームズ」を見た観客がその達成感に感動するように、この
木村秋則氏の話には、読む人を感動させる信念がある。
そして、彼の貫いた信念の底には、人の手が加わらない自然の方法で人間の都合では無く
作物が自然に育つ環境を、なぜ人は、調えてあげないのだろうかという当たり前の事を、
貫いている事にある。

たぶん、読む人は、当たり前の事を貫く事の大切さとそれを出来ない自分が、彼の人生に
触れる事により疑似体験する事で、明日への活力を漲らせるのだろう。




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空の写真 今月の本(2012)
面白かった本などを紹介します。
2012年に読んだ本の中からの紹介です。