海苔

NO,015

■ 海苔

  12月

著者 宮下 章
出版 財団法人 法政大学出版局

毎度お馴染み、法政大学出版局が出す「ものと人間の文化史シリーズ」の中の一冊、相変わ
らず面白いネタの本である。

日本の海苔は浅草海苔にその起源があり、江戸開府の頃、浅草で採れたからか、市がたった
浅草で広まった事が、その由来らしいが、それまでは、一般の海藻と同じ扱いだったらしい。

そんな海苔の歴史が綴られているのだが、このシリーズ、毎回テーマが違い、従って著者も
違うのだが、著者の横道に反れた話が面白い。

江戸でしか生産されなかった浅草海苔を、他の場所でも作れないかと悪戦苦闘した人々の話
が痛快に面白い。
例えば、舞坂で始まった海苔養殖は、諏訪の海苔問屋森田屋が舞坂で生海苔をたべたのが、
きっかけとなり、私財を投じて発展させ、地元の方々から慕われる存在となる。
また、三保での開拓者幕府の役人彦兵衛、上総の近江屋、仙台の猪狩新兵衛は、廻船問屋
だったが、嵐で船を失ったにもかかわらず豪快に吉原で遊び、それを見た海苔商人、桔梗屋
五郎左衛門が、海苔の養殖を進めた事から始まった。
猪狩は、海苔の養殖に成功すると、その権利を協力者に全て譲って新しい事業に向かった、
ユニークな人物である。

こんな海苔の開拓者達の話はそれぞれひとつひとつが、みな面白い小説のネタになりそうで
ある。

誰か小説にしないかね。




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面白かった本などを紹介します。
2012年に読んだ本の中からの紹介です。