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NO,001 |
■ 炉辺夜話
1月
著者 宮本 常一
出版 株式会社 河出書房新社
質素ながらも、極上な懐石料理をじっくりと噛み締めて味わうような文体に、今までは、
知らなかった世界が開けていく。そんな宮本文学の中でも、最も深い内容の一冊である。
前半では、各地での講演で地域活性化の重要性とその方法を説き、中盤では、自らが中心
になって活躍している方々とのユニークな出会いを語り、後半では発起人となり成立させた
「離島振興法」の間違った地元の期待と、中央官庁の型に嵌った融通の利かない対応を挙げ
ている。
本書で特に面白いのが佐渡の鬼太鼓座の話である。
鬼太鼓座を起こした田耕という人物、宮本常一の本を読み、お金を持たずに、日本中を歩い
ている人がいる事を知り、俺も見習おうと鹿児島から歩き出す。
お金が無くなると警察の駐在所に行き、働き口を相談すると何にかしらの働き口がある。
佐渡に渡り何も出来なくなったので、苦し紛れに宮本常一を知っているというと、誰でも家
に泊めてくれたんだそうである。
秋田まで行ったら、その嘘がばれた。
そして、ばれたその人から本物の宮本常一を見てこいとお金を貰って宮本常一のところに、
やってきたそうである。
そこから、宮本常一が、援助の知恵を授け鬼太鼓座が始まった。
昔は、おおらかで、また豪快な人がいたもんである。また、それを後押しをする宮本常一
という巨人がいる。
この人が援助した事は、他には大内宿の保全や周防猿回しの復興がある。
普通の民間人が、その保存と復興をなし得た要因に、実践するユニークな人物がいて、また
それを実現させる能力を持った人との、運命的な変わった出会いがある。
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