グレートジャーニー

NO,009

■ グレートジャーニー「原住民」の知恵

   6月

著者 関野 吉晴
出版 株式会社 光文社

アフリカで誕生した人類の祖先が、長い時間を得て、南アメリカの最南端に
まで到達した「グレートジャーニー」の道筋を逆にたどった著者が、各々の
地に暮らす原住民の様子を綴った本。

紹介する各地の原住民は、必要以上に狩猟採取せずに何もしない事を最上と
するペルーのマチゲンガ、コスタリカのウミガメの卵を取り食糧としながら、
保護の為生まれたウミガメを海に戻すオスチオナールの人々、鯨を捕るシベ
リアのロリノやトナカイやシロクマを狩るコリヤーク、モンゴルの馬を操る
少女プージュ、物を蓄えないアフリカのコエグ、自分の死を、自分で決める
ネパールの僧侶、来世と全ての人類の幸せを願うチベットのカイラスの山裾
を巡礼する人々や、大人に媚びないサルダンの少年などなど・・・

沢山のエネルギーや物を消費する世界から見ると、その対局に位置する不便
ながらも循環型生活にある彼らの焼畑や鯨などの狩猟に対して、沢山のエネ
ルギーや物を消費する先進国の人々が、「地球に優しく」というスローガン
のもと止めろと彼らの伝統ある循環型の生活を壊していく。
そんな現実を、彼らと共に生活する中でこれはおかしいのではないかと著者
は彼ら原住民と一緒の生活をしていく中で感じていく。

発展する事を第一に考える現代社会が、限りある資源を浪費する。
そんな彼らが、自らを棚に上げて「地球に優しく」と称して原住民の生活を
脅かしていく。こんな様子を目の当たりにした著者は、真の幸せとは何なの
だろうと投げかけてくる。

旅先から我が娘に書いた著者の手紙が終わりの方で紹介されている。
この中で、人は、植物や動物の犠牲の上に成り立っている事、自らが動物を
殺して食糧としている事、動物がかわいいとか、かわいくないからという目
で見て、この動物は殺しても良いとか殺してはいけないという情緒的な観点
で判別してはよくないという事、を綴ってる。

地球史上かつて無い程、極端な短時間に進行する環境破壊を行い、人口増加
により、確実に食糧難に向かいつつある状況を作った先進国の有りようが、
問われている中で、変わらずに維持している原住民の考え方、人生観、幸せ
とは?を探る著者の姿勢には深く考えさせられる問題が多くある。


前のお話へ 次のお話へ


空の写真 今月の本(2013)
面白かった本などを紹介します。
2013年に読んだ本の中からの紹介です。