昭和の洋食平成のカフェ飯    

NO,013

■ 昭和の洋食平成のカフェ飯

 12月

著者:阿古 真理
出版:株式会社 筑摩書房

知り合いにプランナーがいるが、毎回、イベントの企画運営計画
とシナリオを作成する際には、およそ100冊以上の、関連する
文献を一週間程で目を通し、方向性や表現に間違えが無いよう
気を使うと言う。
現代の情報社会ではこんな作業も欠かせない大切な仕事であり、
短時間に多くの文献を読み漁る読解力と必要とされるポイントを
抽出する能力とが必要とされるのだろう。
こんな事を本書を読んでいて、改めて感じた。

本書は、戦後の食の変化を雑誌やテレビ番組からその時代、
その時代の人々の嗜好と流行が何か?また何故かを探っている。
大戦があり食料が乏しく、家庭で料理を教えてたくても教える事
が出来なかった戦中の世代。戦後、アメリカ文化が流れ込み、
従来の価値観が崩れ、家庭料理を教わる事無く子供を育て、
当然のごとく、その子供も料理の基礎を知らずにインスタント
食品で、調理せざるを得なかった世代。さらにその子供達が社会
人となり、調理すらしない中食文化や、個食化文化となった現代。
そんな変遷と何故なのかを著者は、雑誌やテレビといったメデ
ィアから、その状況を紐解いていく。

信頼がおけるであろうと言われている、古書の写本を手掛かり
とする歴史学や、古文書や伝承や民具などから、当時の生活の
様子を探る民俗学と同じように、メディアから探る著者は、新しい
学問のジャンルをここで誕生させたと言っても過言では無い。

ここでは、メディアから食の変化と今の問題を抽出しているが、
これは食だけでは無く、衣服や、住まいや、娯楽や、医療や、
睡眠や、性生活などでも同様の手法で分析すれ事が出来る。
歴史学や民俗学と同じように、勝手に学問の名前を付ければ
「生活風俗学」とでも言うのだろうか?

最後に、著者は、参考にした雑誌やテレビ番組やそれを文献化
したもののリストを一覧にして、興味のある方はその文献を、
読んで欲しいと言っている。
歴史学や民俗学では、参考とした文献が、なかなか手に出来な
かったり、また、手にしてもおいそれと読めない。
その意味で、こちらは図書館で手にする事が出来、かつ、現代
語なので読む事が出来る。
そんな楽しみも本書では紹介している。






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