阿部公房とはだれか

.NO,007

■ 安倍公房とはだれか

  3月

著者: 木村 陽子
出版: 有限会社 笠間書院

久しぶりに痛快な評論書を読んだ。
今は亡き、栗本薫または中島梓(どっちだぁ〜?)の後を継ぐ女流
評論家になるのかも知れない評論家の登場である。と、言いたく
なるほど本書は、評論の書籍でありながら、不思議にぐいぐいと
先を読みたい衝動を与えてくれる本である。
この感覚は何だろう?
たぶん、著者の探求心とセンスによるものなんだろうが、その時
の社会状況や安倍公房の心理状態を、知人の手記や安倍公房自身
のインタビュー記事などを丹念に探り、分析している仕事量の、
圧倒的な重厚感がなせる業かもしれない。
そこから導き出される論理の展開が、明快で心地よい。

本書の構成は、三部に分かれる。
まず安倍公房とはというテーマの元で、小説家としての安倍公房
では無く、芝居や映画などを含めた表現者としての、安倍公房の
行動、中でも時代を先取りした「リテラリー・アダプテーション」
という手法を詳しく紹介している。

第二部では、演劇にのめり込みアメリカでの公演を果たしながら
も、また文学の道に戻る流れの中で、安倍公房自身と戦後日本の
変化をリンクさせながら、時代を検証していく。

最後に、安倍公房の小説でもあり演劇にもなって作品「壁あつき
部屋」「どれい狩り」「砂の女」を取り上げ、著者の分析と評論
を著している。
もちろん著者自身、安倍公房は大好きな作家なのだろうが、その
深い分析と洞察力は、単なるマニアを超え読む人をぐいぐいと、
引き込んでいく力を持っている。
今後が、楽しみな評論家である。

ところで余談だが、中島梓(栗本薫は、作家としてのペンネーム
だったのを今、思い出した)の鬼平犯科帳の書評で「水がきた」
から始まるのと、「むっ・・・これはたまらん」というくだりは、
この人の最高傑作だと今でも思っている。
この著者とは、そのエンターテイメント性と、軽妙なタッチなど
から全くタイプの違う女性評論家だが、本書を読んだ後いきなり
思い出したのが中島梓だった。





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