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NO,009 |
■ 猟師の肉は腐らない
12月
著者: 小泉 武夫
出版: 株式会社 新潮社
大人の童話である。
または、日本のガリバー探検記とも言うべきか?
著者が、渋谷の飲み屋で本書の主人公と出逢い、茨城県との県境
に近い福島県の山奥へと移り住んだ、その主人公の山小屋での、
数日間の生活の様子を描いた物語である。殆ど自給自足の生活を
しながら猟師として、兎、猪を追うその暮らしは、日本人が忘れ
てしまった自然と一体となった昔からの智恵が生かされた暮らし
である。
そんな、日本人の智恵が随所に生かされた暮らしぶりに、著者が、
驚かされる様子と共に紹介される。
特に、猟師、「またぎ」の暮らしはかなり詳しく書かれている。
その土地によって「またぎ」の暮らし方は違ってくるのだろうが、
ここ、南福島の「またぎ」の暮らしと、しきたりはこうなんだと、
大変詳しく書かれている。
著者は、発酵学の先生で食の専門家だが本書は食だけでなくて、
民俗学の領域にまで及んでいる。
ところで、本書は実話なのだろうが?
この物語の主人公ははたして、実在するのだろうか?
著者が、今まで知り得た残して置きたい日本の智恵を分かり易く、
読み易い物語、フィクションとして著したのが本書なのでは無い
のではなかろうか?
冒頭に、大人の童話か日本のガリバー旅行記みたいだと書いたの
は、そんな訳があったからである。
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