浦島太郎はどこに行ったのか    

NO,005

■ 浦島太郎はどこに行ったのか

  6月

著者 高橋 大輔
出版 株式会社 新潮社


浦島伝説、日本人で知らない人はいない昔話である。
全国に点在する浦島伝説のルーツはどこにあるのか?その浦島伝説
が語られる主要な地域を、著者が訪ね、探っていくその過程が綴ら
れたのが、本書である。

そんな誰でも知っている浦島伝説は、その底辺に、海洋民族である
日本人が憧れる海の彼方にあるという、蓬来の地、又は、ニライカ
ナイと呼ぶ楽園信仰があるというのが、一般的な考えだが、著者は
浦島伝説は、実際にあった出来事だと言う。
また、浦島伝説の話は海の彼方にある宮殿に行く、神話の海彦山彦
の話にも繋がるという。

遭難した船が南西に流されて、河北省辺りの同時、日本よりも数段
進んだ文化と、経済を営む地にたどり着き、また日本に戻って来た
人達の体験談であるという。今日で言うならば、シリコンバレーの
最先端のITテクノロジーを目の当たりにした人が、帰国し報告会
をするようなものなんだろうと想像出来る。
そんな、皆が驚く体験談を長く後生に伝えていったのが、浦島伝説
なのだと著者は著している。

さらに、浦島伝説が残る各地に関連性が有るかどうかを調べるのだ
が、その結果、互いに関連性があるというのも、なかなか興味深い。
丹後の伊根の浦嶋神社に伝わる呪言の意味が、鹿児島の海彦山彦の
神話の地の事を謳い、浦島太郎に帰らないで欲しいと願う、乙姫の
気持ちを歌ったものであり、その呪言が、日本語と韓国語が混じり
あったものだったり、さらに海彦山彦の宮に出て来る「わたつみ」
が古い韓国語だったりと、西日本各地と韓国を繋ぐ広域の経済圏が
築かれていたのだと説いている。

歩いて探して人と出会い、伝承を比較する。
これも考古学、民族学の新たなフィールドワークなのかも知らない。









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