NO,005

■ 私たちの体にアマテラスの血が流れている

 12月

著者 上田 篤
出版 株式会社 宮帯出版社

本書は、歴史が専門の歴史学者が書いた歴史書では無く、建築家
が書いた歴史書である。そして、本書もそうだか、そういう専門
外の方が書いた本の方が、歴史の専門家が書いた本よりも、断然
面白い。

日本の成り立ちを書いた、古事記にあるアマテラスと高天原とは
何か?また、天皇との関係は何か?古代アジアの気候と人の動向
を考慮しながら、アマテラスの正体と高天原の場所を推理されて
いる。

で、アマテラスとは何か?
それは、アジアの動乱で国を追われた大陸の人々が、日本海側の
海岸にたどり着き、当時、丘陵地で暮らしていた縄文人と混ざり
合う。そして、新たな農作物としての稲を海沿いの潟を干拓した
場所で育てていく。
日本の気候に合わせて、様々な農作業を行うきっかけを、先住の
より自然に密接した暮らしをしていた縄文人の巫子に委ねた。
その巫子が、太陽の運行の様子から占っていたので、日を診る子、
すなわちヒミコ、そして、天から大地を照らす太陽を診る、神と
して、アマテラスオオミカミとなった。

さらに、高天原の場所は?
潟を干拓して田圃とするなら、水路を開いて、畔を作らなければ
ならない。その為には、多くの杭にする樹木が必要となる。
当時の日本海側で、潟が有り、山を背景に、杭となる樹木が有る
場所として、著者は、加賀平野に面した山の上としている。
そして、この地で、その山の頂きから平野を眺め、国見を行った
と推測をしている。

さて、当事の集落は同族で、人工も少ない為、子孫を残す為には、
他の部族の血が必要であった。当事の農耕や採集の作業は、集落
の近くで行われる事が多く、主に女性が中心となっていたため、
男は遠く迄狩に行ったりと、行動範囲も広くなり他の集落迄行く
事が多かった。
そして、結果的には妻問婚となり、母系家族を中心とした集落が
形成されていった。
そんな、外との交流が続く中、集団で渡来したグループが鉄製の
農機具を持ち込む。これにより生産性が増して、男性の労働力も
必要と成り、今までアマテラスを中心とした母系集落から、男性
のリーダーが加わったヒメヒコ体勢となった。
ここに、天皇につながるグループが出来上がる。

さて、この男女が互いに協力するグループ、さらにより良い鉄製
の農機具を造る為、鉄を求めて山陰から九州に向かう。
そして、さらにより良い農地を求めて、難波の潟を開拓し、勢力
を伸ばし、大和の地に定住する。
これが、いわゆる東征である。

さて、この地で安定した暮らしを営む事が出来るようになったものの、
互いの勢力争いから、九州と出雲が共同で、大和に鉄を入れなくなる。
困った大和のグループは、直接大陸から鉄を入手する過程で戦争
となる。

それからは、魏志倭人伝にある通り。

著者は、邪馬台国はこのグループが落ち着いた大和であると推測
している点が、UKIの考えとは違うが、その着想には大変興味
を持った一冊であった。







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