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■ イタリア小さな村へ

  3月

著者:中橋 恵 森 まゆみ
出版;株式会社 新潮社

これもイタリアに旅行をしようと思い、その前に予備知識をと、
読んでみた本である。

エコツーリズムが盛んなイタリアで、新しい宿泊の形態として、
最近注目されているのが、「アルベルベ・ディフーゾ」という、
宿泊施設なのだそうである。
日本語に直訳すれば、分散した宿という意味である。

イタリアも日本と同じく過疎化が進み、地方の集落では空き家と
なった古い住宅が増えて社会問題となっているそうである。
そんな空き家対策と地域活性を兼ねて生まれたのが、この宿泊の
形態なのだそうである。

集落の空き家を一括して購入したり、賃貸として借りて、修繕し、
旅行客が宿泊出来るような施設とする。そして、そのうちの一軒
をレセプションとしてスタッフが在中して、旅行客の案内をする。
各々の施設には、各部屋毎にバストイレと冷蔵庫が付き、WiFiが
完備されている。
食事は、施設内の一軒をレストランにしたり、既存のレストラン
と提携して旅行客を受け入れる。ベットメイキングなどは、地元
の住民が対応する事で、雇用は生まれる。
そして、外部の人間である、旅行者とのコミュニケーションが、
生まれる事で住民に活気が蘇る。
更には、旅行者向けにサイクリングやトレッキングなどのコース
が用意され、集落の自然と人々の生活を見聞きし、一緒に生活を
共にする事が出来る。
団体旅行で喧噪の慌ただしさを経験して、違ったバカンスを楽し
もうと思う旅行者から人気を呼んでいるんだそうである。

そんな「アルベルベ・ディフーゾ」に宿泊し、自らの体験を著す
のが本書である。
紹介されているのは、以下イタリア全土の20の施設。いずれも
大都市からは、移動に1時間以上掛かる小さな集落である。

〇エコベルモンテ
 カラブリア州ベルモンテ・カラブロ
〇セクスタンティオ・レ・グロッテ・デッラ・チヴィタ
 バジリカ州マテーラ
〇ソット・レ・クメルセ
 ブーリア州ロコロトンド
〇アルベルゴ・ディフェーゾ・モノポリ
 カンパーニュ州カステルヴェーテレ・スル・カローレ
〇イル・マンドルロ
 サルディーナ州カプラス
〇アクアエ・シニス
 サルディーナ州カプラス
〇ラ・ピアーナ・ディ・ムリーニ
 モリーザ州コッレ・ダンキーニ
〇ロガンダ・アルフェエリ
 モリーゼ州テルモリ
〇ボルゴ・ディ・サガリ
 ラツィオ州ザガローロ
〇クルスポルティ
 ラツィオ州ラブロ
〇トッレ・デッラ・ボトンタ
 ブンブリア州カステル・リタルディ
〇ボルゴ・サンタルジェロ
 ウンブリア州グアルド・タディーノ
〇ボルゴ・ディ・センプロニオ
 トスカーナ州センプロニアーノ
〇イル・カント・デル・マッシュ
 トスカーナ州テッラヌオーヴァ・ブラッチチュリーニ
〇ロガンタ・セニオ
 トスカーナ州パラッツオーロ・スル・セニオ
〇モンターニャ・ヴェルテ
 トスカーナ州リッチチャーナ・ナルディ
〇アル・ヴェッキオ・コンヴェント
 エミリア・ロマーニャ州ポルティコ・ディ・ロマーニャ
〇ロカンダ・デッリ・エルフィ
 ピエモンテ州カノージオ
〇ボルゴ・ディ・ムストナーテ
 ロンバルディア州ヴァレーゼ

さて、その「アルベルベ・ディフーゾ」。今迄のホテルのような
快適さを求める旅行者には、不便を感じる宿泊施設でもある。
入り組んだ、自動車が入る事が出来ない細い道の先に宿や、階段
でしか行けないバリアフリーでは無い宿。水が流れなかったり、
シャワーが水しか出なかったりと様々な不便さがある。

とはいえ、新しい形態の宿泊施設の為、その質を保持する為に、
規格に適合した施設しか、「アルベルベ・ディフーゾ」を名乗る
事が出来ず、規格に違反すると重い罰則金が発生する。
そんな厳密な方針を貫く事で、乱立と質の低下を防いでいる。
そして、田舎の実家に帰ったような、その土地の人々と共に生活
する悦びを感じる事が出来る。この宿泊施設の形態が他の国でも
注目されているようである。

UKIが以前、京都で何日か宿泊したゲストハウスも、古い町屋
をそのままゲストハウスにして、町屋を保存していこうという市
の方針に基づいて作られた宿泊施設であった。
「アルベルベ・ディフーゾ」のような、経営者が一括して管理を
する形態ではなかったが、何軒かのゲストハウスと地元の飲食店
や銭湯やコインランドリーがお互いに提携し、地域として旅行客
を受け入れる体制を取っていた。、
この「アルベルベ・ディフーゾ」の原点である、地域の文化と、
建物の保持と、地域活性、というテーマと同じ発想の宿泊施設で
あったと再認識をした。

京都は、大都市で集客が望めるが、そうでは無い過疎地で、この
ような施設が出来て、地域活性が行われる事を望む。





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