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NO,004 |
■ ねぶたの神様
■ このコラムでもいつか紹介した「ギチギチ螺子捲くっちゃ」の愛すべき東北の
おっちゃんの話である。
■ 以前は仕事で一緒に結構全国を廻りました。
札幌ではビール園でジンギスカンを堪能し、青森では浅虫温泉で湯に浸かり、
秋田では田沢湖の近くでカタクリの花が咲き乱れる群生を愛で、盛岡では、
冷麺を食べ、仙台では牛タン、山形では板蕎麦を喰らい、福島では飯坂温泉
で火事に遭い、横浜では美術館巡りをし、広島では原爆ドームを見上げながら
黙祷を捧げて蛎を喰い、松山では道後温泉に早朝から並び、高松ではこんぴら
さんに真夏に登り、屋島では平家物語を朗々と語り、博多ではラーメンを食べ
柳川では、船に乗って水路を巡る。
■ どんな仕事か?と思われるが、これは仕事の合間の息抜き。時としてまた、
殆んどが、息抜き目的で仕事を見つけて全国を廻るのでした。
もちろん、企画と段取りは、このおっちゃんである。
大きな会社の研修講師をやっていたこのおっちゃんは、全国に師と仰ぐ弟子が
約1000人程いる。宿の手配と息抜きの段取りは、全てこの弟子の仕事である。
それに便乗するUKIであった。
■ そんなある日、青森での話。その日は、たまたま偶然にも(かなり計画的だが)
8月1日ねぶた祭りである。一年前に宿の予約をしなくては泊まれない。が、さすが
弟子が全国にいる我が愛すべき講師殿、ありとあらゆる手を使い,とある宿の布団
部屋を無理やり強引に空けさせて宿を確保、さあこれからねぶた祭り見物である。
■ UKIはその昔高校生だった頃、津軽ユースホステルひとり旅をした事がある。
今考えると我ながら地味な変わった高校生であった。こんな奴は早々いない。
(確かに同年代の同じような旅行をしている人には巡り合えなったが・・)
その時、弘前でねぷた祭りに遭遇し地元の高校生と一緒に跳ねたのである。
あの、跳ねるってのはいいね。若くて元気が無くては出来ません。
あのパワーが祭りを見物する人にも伝わるのか大変感動する祭りである。
だから、人気が有り、宿が取れず、結果布団部屋に泊まる羽目になる。
■ で、青森のねぶた見物であるが、くだんのおっちゃんが黙って見物している訳
が無い。ねぶたは、浴衣に鈴を沢山付けて跳ねるんである。賑やかなその音が
ねぶた祭りをさらに盛り上げる。跳ねた勢いで鈴が落ちる。その鈴を拾うと、ご利益が
あるらしい。
が、このおっちゃんは落ちた鈴を拾うのでは無く、跳ねている人から直接貰うのである。
それも若い女性だけを狙うのである。
普段、知らない人から声をかけられると警戒をするものだが、祭りのせいか、はたまた、
おっちゃんの話が上手なのか声をかけられた女性は結構楽しそうに鈴を取らせている。
これは、ちょっと邪道だぞとUKIは思う。UKIは遠慮している。と、若い女性の袂の鈴を
取らせて貰いながらおっちゃんは大声で言うのである。
「UKIさぁ〜ん。何照れてるちゃ!UKIさんも貰え!」
■ これは反則である。そういえば飛行機に一緒に乗る時、座席表を見ながら22番とか
今日は30番とか言っている。何を選んでいるかと思うと真ん中のドア近くの席である。
あのスチワーデスのおねえさんとのご対面席である。
向こうも仕事で疲れているだろうし、こっちも仕事で疲れている。飛行機の離着時の間
くらいそっとしてあげてもと思うのであるが、疲れていないのはこのおっちゃんだけである。
そんな時、必ずこのおっちゃんは言うのである。
「UKIさぁ〜ん。何照れてるちゃ!UKIさんもしゃべれ!」
これは反則技であろう。
■ で、何人も何人も若い浴衣姿の女性を口説き、鈴を自分で持ちきれなくなると、
「替わりにこれ持ってろ」である。UKIは同類と見られたくないので、すこし距離を置いて、
後を着いて行く。距離が10mは離れた時である。
おっちゃんの餌食となった若い女性二人組みがおっちゃんから開放され、こちらに歩いて
きた。彼女達は、UKIがおっちゃんの連れとは思っていない。
そんな彼女達がすれ違った時、彼女達の会話が聞こえてきた。
「ねぶたの神様って本当にいるんだ」
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