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NO,029 |
■ 人類の足跡10万年全史
12月
著者:スティーヴン・オッペンハイマー
訳者:仲村 明子
出版:株式会社 草思社
以前読んだ「イブの七人の娘たち」で書かれていたミトコンドリアDNAと、Y染色体遺伝子の
経年突然変異による変化量から人類はどこから出発して、各々の人種がどういう経緯でその
土地にいつ辿り着いたかを10万年単位で語った本である。
前述の「イブの七人の娘たち」でも語られていたが、全ての人類は共通の母親を持つ。
今から20万年前のアフリカで暮らしていた「イブ」がその出発点である。
そのイブから生まれた二人の何代かの孫娘「マンジュ」と「ナスリーン」のミトコンドリアDNAを
持った子孫達がアフリカの地を出て、全世界に広まっていく。
本書はここ10年の間、人類の起源を探る方法の中で最も驚異的で、かつ的確な手法である
ミトコンドリアDNAとは何か?についてはあまり詳しく書かれていない。
その意味で「イブの七人の娘たち」を読まれてから、本書を読む事をお奨めする。
なるほどなるほどと理解も進み、イブの世界に引き込まれていく事となるでしょう。
ミトコンドリアDNAを理解した上で本書を読むと、もはやこの業界(?)ではポピュラーとなった
ミトコンドリアDNA鑑定の手法を元に集められた多くのサンプルを分析する事で、多くの学者が
発表した人類起源の定説となりうる過去10万年間の人類の足跡を、分かり易く説明してくれる。
本書で面白いのは、DNA鑑定と合わせて気象の変化から人の動きを探っている点である。
20万年前のアフリカを起源とする人類が、氷河期前にアフリカを出発するがその多くは、
氷河期の気候についてこれずに減少してしまう。
氷河期後、アフリカを出発してインド洋沿いにオーストラリアまで拡がった人類は、約7万年前
インドで起きたトバ火山の影響を受けて、インド以西とは断絶される。ここから西・東は交流する
事なく何万年かを過ごしていく。
世界規模でのDNA分布の傾向を、こんな古代の気象状況と結び付け解説をしてくれる。
非常に説得力のある内容である。ちなみにページも413ページあり、なかなか読み応えはある。
最近の考古学は地理学や気象学、解剖学など異なる分野の学問の力を借りる事で多くの業績
を残す事が増えている。それだけ、未開拓の学問分野なのだろうか?
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